「ChatGPTが、存在しない論文を自信たっぷりに引用してきた」。生成AIを使ったことがある人なら、似た経験があるはずです。
この現象はハルシネーションと呼ばれます。AIが事実ではない情報を、もっともらしく生成してしまう性質のことです。業務で使う場合、これは避けて通れない課題です。誤った情報をそのまま社外資料や顧客への説明に使えば、企業の信用や法的な問題に直結します。
ただし、正しく理解し、対策を業務の流れに組み込めば、リスクは大きく下げられます。この記事では、ChatGPTコンサル編集部が、ハルシネーションの仕組み、起きやすい場面、そして企業が取るべき3層の対策を解説します。
⚠️ 本記事は2026年9月時点の情報です。モデルの精度は継続的に改善されていますが、ハルシネーションが完全になくなることはありません。最新の仕様はOpenAI公式でご確認ください。
ハルシネーションとは
ハルシネーションとは、AIが事実に基づかない情報を、あたかも正確であるかのように生成する現象です。英語の「幻覚」が語源で、AIが幻を見ているかのように、存在しない情報を語ることからこう呼ばれます。
厄介なのは、誤りが「それらしい」形で出てくる点です。曖昧な言い方ではなく、断定的で、具体的な細部まで伴っています。だから気づきにくいのです。
実際に起きた例
- 実在しない論文や判例を、著者名や年号つきで引用した
- アクセスすると存在しないURLを提示した
- 実在しない法令や制度を、条文の内容まで説明した
- 存在しない映画や歴史上の出来事を、あらすじや経緯つきで語った
- 実在の人物に、事実ではない経歴や犯罪歴を付与した
海外では、AIが生成した架空の判例を弁護士が裁判所に提出し、問題になった事例もあります。「もっともらしいから信じてしまう」という構造が、実害につながっています。
💬 さとしさん(編集長) 怖いのは「間違っている」ことより「間違いが本物そっくり」なことだ。この性質を知るのが対策の第一歩だぞ!
なぜ起こるのか
原因は、ChatGPTの仕組みそのものにあります。
ChatGPTは、膨大な文章を学習し、「この文脈なら次にどんな言葉が続くのが自然か」を確率的に予測して文章を作っています。事実を保管したデータベースを検索して答えているわけではありません。
そのため、次のことが起こります。
- 文章の自然さが優先され、内容の正確さは保証されない
- 知らないことを聞かれても、「知らない」と言わずに、それらしい言葉をつないで答えてしまう
- 学習データにない最新情報や、細かな固有名詞ほど、もっともらしい作り話になりやすい
つまりハルシネーションは、欠陥というより仕組み上の特性です。だから「いつか完全になくなる」と期待するより、「必ず起こるものとして備える」ほうが現実的です。
2026年の状況|改善はしたが、消えてはいない
誤解を避けるため、現状を正確にお伝えします。
モデルの世代が上がるごとに、ハルシネーションの発生率は下がっています。2026年のモデルでは、確認できない事柄について「信頼できる情報が見つからない」と答える場面が増えました。初期のChatGPTが存在しない出来事の詳細を作り上げていたのに比べると、明らかな改善です。
一方で、ゼロにはなっていません。2026年8月時点の検証でも、条件によっては存在しない事柄を具体的に説明してしまうケースが確認されています。
「昔より減った。でも必ず起こる」。この認識が、業務での正しい前提です。
💬 あやさん(副編集長) 「最新モデルだから大丈夫」は禁物。減ったのは事実だけど、確認の手を抜いていい理由にはならないよ!
起きやすい場面
すべての出力に等しく起こるわけではありません。リスクが高い場面を知っておくと、確認の優先順位がつけられます。
| 場面 | リスク | 理由 |
|---|---|---|
| 固有名詞(人名・社名・製品名) | 高 | 似た名前を混同しやすい |
| 数値・統計・日付 | 高 | それらしい数字を生成しやすい |
| 法令・判例・制度 | 高 | 条文や事例を作り上げることがある |
| 出典・URL・引用 | 非常に高 | 存在しない参照先を示しやすい |
| 最新の出来事 | 高 | 学習データにない期間は特に不安定 |
| 専門性の高い狭い分野 | 高 | 学習データが少なく推測に頼る |
| 一般的な文章作成・要約 | 低 | 事実の新規生成が少ない |
逆に、メールの下書きや文章の言い換えのように「事実を新しく生み出さない」作業では、リスクは低くなります。用途によって、確認の厚さを変えるのが実務的です。
対策①|プロンプトで抑える
最も手軽で効果のある対策が、指示の出し方です。次の一文を加えるだけで、作り話が大きく減ります。
不確かなら「分からない」と言わせる
確認できない場合は推測で補わず、「分からない」と答えてください。
出典を明示させる
回答の根拠となる情報源を示してください。
情報源が見つからない場合は、その旨を明示してください。
範囲を限定する
以下の資料に書かれている内容だけをもとに答えてください。
資料にないことは「資料に記載なし」と答えてください。
〔資料を貼る〕
このほか、質問を具体的にする、前提条件を渡す、複雑な問いは段階に分ける、といった基本的な工夫も、誤りの発生を抑えます。曖昧な質問ほど、AIは推測で埋めようとします。
対策②|機能を使う
ChatGPTには、ハルシネーションを抑える方向に働く機能があります。
Web検索を使わせる
最新情報や事実確認が必要な質問では、検索機能を有効にしてください。学習データではなく、実際のWeb上の情報を参照して答えるため、作り話が減ります。
出典付きの調査機能を使う
時間をかけて複数の情報源を調べ、出典付きのレポートを作る機能があります。調査業務では、通常の会話より信頼性が高くなります。ただし、出典が示されていても、その中身が正しく引用されているかの確認は必要です。
考える段階のモデルを使う
回答前に段階的に考えるThinking系のモデルは、事実誤認の発生率が低いとされています。分析や判断が必要な場面では、こちらを選んでください。
自社の資料を参照させる
社内規程やマニュアルなどをアップロードし、その範囲で答えさせる使い方です。一般知識ではなく手元の資料を根拠にするため、業務に即した正確な回答になります。プロジェクト機能やカスタムGPTで、資料を常に参照する形にしておくと運用しやすくなります。
💬 さとしさん(編集長) 「検索させる」「出典を出させる」「自社資料を参照させる」。この3つを組み合わせれば、実務での事故はかなり減らせるぞ!
対策③|業務の流れに組み込む
プロンプトと機能で発生を減らしても、ゼロにはなりません。最後の砦は、人による確認を業務の流れに組み込むことです。
用途ごとにリスクを分類する
すべての出力を同じ厚さで確認するのは非現実的です。次のように分けると運用が回ります。
| 用途 | 確認の厚さ |
|---|---|
| 社内の下書き、アイデア出し | 軽い確認で可 |
| 社内資料、報告書 | 数値と固有名詞を確認 |
| 社外文書、顧客への説明 | 全面的に確認、根拠を照合 |
| 法務・税務・医療に関わる内容 | 専門家の確認を必須にする |
「誰が・何を」確認するかを決める
「AIの出力は確認する」だけでは、実際には誰も確認しません。社外に出す文書は担当者と上長の二重チェック、数値は元データと照合、といった具体的なルールに落とし込んでください。
従業員に仕組みを教える
ハルシネーションが起こる理由と、起きやすい場面を知っているだけで、確認の精度は変わります。「AIは間違える」という抽象的な注意ではなく、「固有名詞と数値と出典は疑う」という具体的な指針を研修で共有しましょう。
事故が起きたときの対応を決めておく
誤情報が社外に出てしまった場合の訂正手順、報告先、公開停止の判断者を、あらかじめ決めておきます。初動の速さが被害の大きさを左右します。
💬 あやさん(副編集長) 「確認する」を掛け声で終わらせない。誰が何をどう確認するかまで決めて、初めて仕組みになるよ!
「使わない」という判断もリスク
ハルシネーションを理由に、AIの利用そのものを止める企業もあります。しかし2026年の環境では、それ自体がリスクになりつつあります。
周囲がAIで業務時間を大幅に削減しているなか、自社だけが手作業を続ければ、生産性の差は開き続けます。求められているのは「使わない」ではなく、「誤りを前提に、検知と修正の仕組みを組み込んで使う」ことです。
完璧なAIを待つ必要はありません。仕組みで補えば、十分に実務で使えます。
よくある質問(FAQ)
Q. ハルシネーションとは何ですか? A. AIが事実ではない情報を、もっともらしく生成する現象です。存在しない論文の引用や、実在しない法令の説明などが代表例です。
Q. なぜ起こるのですか? A. ChatGPTは次に続く言葉を確率的に予測して文章を作る仕組みで、事実を検索して答えているわけではないためです。仕組み上の特性であり、完全にはなくなりません。
Q. 最新モデルなら大丈夫ですか? A. 発生率は下がっていますが、ゼロではありません。2026年の検証でも、条件によっては作り話が確認されています。確認の手を抜く理由にはなりません。
Q. 一番効果的な対策は何ですか? A. 単独の対策はなく、プロンプトの工夫、検索や出典機能の活用、人による確認の3層を組み合わせることです。特に社外に出す内容は、必ず人が根拠を照合してください。
Q. 何を重点的に確認すればよいですか? A. 固有名詞、数値、法令、出典やURL、最新の出来事です。逆に、文章の言い換えや下書きのような作業はリスクが低くなります。
まとめ
ChatGPTのハルシネーションについて、要点を整理します。
- AIが事実ではない情報をもっともらしく生成する現象。仕組み上の特性で、ゼロにはならない
- 2026年のモデルでは大きく減ったが、確認を省いてよい理由にはならない
- 起きやすいのは、固有名詞、数値、法令、出典、最新情報
- 対策は3層。プロンプトで抑える、検索や出典機能を使う、人の確認を業務に組み込む
- 用途ごとに確認の厚さを変え、誰が何を確認するかを具体的に決める
- 「使わない」ではなく「誤りを前提に仕組みで補う」のが2026年の正解
まずは、次にChatGPTを使うとき、「確認できない場合は分からないと答えてください」の一文を足してみてください。そして社外に出す内容は、固有名詞と数値だけでも必ず照合する。この2つを習慣にするだけで、実務でのリスクは目に見えて下がります。
💬 さとしさん(編集長) AIは間違える。それを前提に仕組みを作った企業だけが、安心してAIの恩恵を受けられるんだ!
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